事務所通信平成29年1月号

【労働時間】

関連助成金も創設へ! 注目の「勤務間インターバル制度」

◆長時間労働の是正が喫緊の課題

現在、国を挙げて“働き方改革”に取り組もうという動きがありますが、特に長時間労働の是正は待ったなしの問題だと言えます。

今年6月に閣議決定された『ニッポン一億総活躍プラン』においても、「『睡眠時間が少ないことを自慢し、超多忙なことが生産的だ』といった価値観が、この3年間で変わり始めている。長時間労働の是正は、労働の質を高めることにより、多様なライフスタイルを可能にし、ひいては生産性の向上につながる。今こそ、長時間労働の是正に向けて背中を押していくことが重要である」とされています。

◆EU諸国では義務化

そんな中、長時間労働を是正する手段の1つとして注目されているのが、「勤務間インターバル」です。

この制度は、その日の勤務終了時から翌日の勤務開始時までに、一定時間(インターバル)を設けることにより、強制的に休息時間を確保するものであり、EU諸国では「24時間につき最低連続11時間の休息時間」が義務化されています。

日本でもこの制度を導入しようとする動きがあり、自民党の「働き方改革に関する特命委員会」は、今年中にまとめる予定の中間報告に「勤務間インターバル」の導入を進めるための環境整備に取り組むことを明記する方針を示しています。

◆関連助成金が創設予定

また、厚生労働省からは、「勤務間インターバル」を導入した中小企業に対して助成金を支給する方針が発表されています(平成29年度からの予定)。

助成の対象となるのは、「就業規則等の作成・変更費用、研修費用、労務管理用機器等の導入・更新費用等」であり、助成率は費用の4分の3(上限50万円)となっています

 その他、導入事例集の作成や各種広報等により幅広く制度の周知を図る方針も示しており、今後ますます注目が集まりそうです。

 

【雇用保険】

2017年「雇用保険」はこう変わる!

◆1月1日以降:65歳以上への適用拡大

今年12月末までは、「高年齢継続被保険者」に限り、65歳以上の方も雇用保険の適用対象となっていますが、2017年1月1日以降、(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であり、(2)31日以上の雇用見込みがある方は、「高年齢被保険者」として雇用保険の被保険者となります。

◆適用拡大に伴う企業の実務

上記の適用拡大を受け、以下の手続きが必要となります。
高年齢継続被保険者である方を1月1日以降も継続して雇用している場合は、自動的に被保険者区分が変更されますので、手続きは不要です。
2016年12月末までに65歳以上の方を雇用し1月1日以降も継続して雇用している場合は、ハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
1月1日以降に適用対象となる65歳以上の方を新たに雇用した場合も同様の手続きが必要です。

◆対象者に係る手続きのタイミング

新たに雇用した方が適用要件を満たす場合は、雇用した日の翌月10日までに提出します。
2016年12月末までに雇用した適用対象者の場合は2017年3月31日までに提出します。雇入れ後の労働条件変更により適用要件を満たすこととなった場合は、労働条件変更の日の属する月の翌月10日までに提出します。

◆4月1日以降:雇用保険料率引下げ等

12月8日に、厚生労働省の労働政策審議会(雇用保険部会)で雇用保険制度改正案の報告書が了承され、来年の通常国会に雇用保険法などの改正案が提出される見通しです。
この報告書によれば、2017年度から3年間、労使折半で負担する雇用保険料を0.8%から0.6%に引き下げます。
また、失業手当の給付額を1日当たり136~395円引き上げ、倒産や解雇で離職した30~44歳の方(被保険者期間1年以上5年未満)の支給日数を120~150日にします。有期契約労働者が雇止めにより離職した場合の支給日数を拡充する措置は、5年間延長します。
さらに、通常国会には育児休業期間を最長2年とする改正案も提出される見通しですが、育児休業給付についても給付期間を最長2年とし、支給率を休業開始から半年は賃金の67%、半年経過後は50%とすることも盛り込まれています。

 

【求人・採用】

売り手市場が続く中、「多様な選考機会」を検討する企業が増加

◆売り手市場が続く!

ここ数年、新卒採用は「売り手市場」が続いており、企業は採用活動を活発化させています。新卒採用にかかわらず、人手不足の中、採用難を感じている企業も多いことでしょう。
一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)が会員企業を対象に実施した「2016年度 新卒採用に関するアンケート調査」(調査期間2016年7月5日~8月22日、回答社数709社)によると、2017年4月入社対象の採用選考活動について、採用選考活動を実施した企業(実施予定も含む)の割合は96.8%と高水準で推移しているそうです。
2017年入社については「前年と比べて売り手市場であった」(71.3%)、「前年と変わらなかった」(26.2%)と回答した企業が多数を占めており、2016年入社においても9割弱が「前年よりも売り手市場であった」と回答していることから、売り手市場の状況は続いていることがわかります。

◆多様な選考機会を提供する企業が増える?

上記の調査では、「新卒一括採用についての現在と今後の基本方針」についても聞いており、現在の考え方としては、「春季一括採用のみ実施」(45.8%)との回答が最も多かったものの、今後については「春季一括採用を基軸としつつ、多様な選考機会を設ける」(53.6%)とする回答が最も多く、「春季一括採用のみ実施」とする回答(27.6%)よりもかなり多くなっています。
現状では春季一括採用を実施している企業でも、今後は多様な選考機会を検討していく例が増えていくことが予想されます。

◆経営環境の変化を踏まえた選考活動の検討

また、多様な選考機会を提供する理由としては、「様々な機会を設けることで優秀な人材を確保しやすくするため」(87.3%)との回答がトップで、「既卒者、留学生、外国人など多様な人材を確保するため」(74.8%)、「経営環境の変化を踏まえ、柔軟に必要な人材を採用するため」(71.3%)との回答が続いています。
人手不足やグローバル化の時代に向けて、現状の採用活動だけでは対応しきれないことを企業も感じ始めているようです。

◆中小企業も柔軟な発想が求められる

売り手市場が続く中、大手企業以上に採用活動に苦慮している中小企業は多いでしょう。
今後は、一時的な「売り手市場」「買い手市場」などの動向に惑わされず、長いスパンでみた独自の人材確保策を模索していくことが必要になってくるでしょう。

 

【1月の税務と労務の手続[提出先・納付先]】

10日
○ 源泉徴収税額(※)・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]
※ただし、6ヶ月ごとの納付の特例を受けている場合には、28年7月から12月までの
 徴収分を1月20日までに納付
○ 雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>
[公共職業安定所]
○ 労働保険一括有期事業開始届の提出<前月以降に一括有期事業を開始している場合>
[労働基準監督署]

31日
○ 法定調書<源泉徴収票・報酬等支払調書・同合計表>の提出[税務署]
○ 給与支払報告書の提出<1月1日現在のもの>[市区町村]
○ 固定資産税の償却資産に関する申告[市区町村]
○ 個人の道府県民税・市町村民税の納付<第4期分>[郵便局または銀行]
○ 労働者死傷病報告の提出<休業4日未満、10月~12月分>[労働基準監督署]
○ 健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]
○ 健康保険印紙受払等報告書の提出[年金事務所]
○ 労働保険料納付<延納第3期分>
○ 労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]
○ 外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>
[公共職業安定所]
○ 固定資産税に係る住宅用地の申告[市区町村]

本年最初の給料の支払を受ける日の前日まで
○ 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出[給与の支払者(所轄税務署)]
○ 本年分所得税源泉徴収簿の書換え[給与の支払者]

 

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